もうどのくらいの時間歩いて来ただろう…。
膝上よりもある一面無表情な〝 雪 〟に
一歩一歩〝 足 〟を突き刺しながら
時には立ち止まり、掘り起こし、踏み固め、
帰り道も作りながら
ひたすら道なき道を前へ前へと踏み進めて来た。
このクソ寒いというのに
逆にカラダの中は熱くなっていた。
でも手袋を嵌めてるにも関わらず
次第に中の指は冷たく千切れんばかりに痛みだし
ブーツの中には雪が入り込んで
冷たいのが溶けた後イヤな心地がずっと続く。
息は切れぎれに
飛び込む雪の水滴は眼鏡を曇らせ
泥々と鼻水も止まらず全身びしょ濡れ。
もう〝 最悪 〟だ。
その間も雪はきれぎれに
風に暴れながら視界を白く遮ってきた。
〝 やめときゃヨカッタかな…〟
〝 ヤバいかな… 〟
〝 もう引き返そうか…?〟
何度か頭をよぎったが
ここまで来たらやっぱり行くしかないとも思った。
ひたすらに木々が生い茂る中を縫うように足を進めて来た。
そしてようやく茂みの向こう側に視界がひらけるのが見えた。
目の前には〝 あいつ 〟が俺を待ち構えていた。
もうこれは〝 最悪 〟だ…。
そんな時ほど
他に撮りに来る奴なんていない。
そんな時だからこそ
被写体を我がモノにし、唯一無二の作品にできる。
それは最高に贅沢な時間だ。
最悪の〝 状 況 〟こそが、最高の〝 瞬 間 〟を手にすることができる…。