冬 菊 の
ま と ふ は お の が
ひ か り の み ……………… 水原秋桜子
冬の季節……枯れて色彩を失ってしまった自宅の庭に雲間から短い間だけ出てきた日差しが遅咲きの菊の花を照らす。それはあたかも自ら光を放つようだった…という感じだろうか。
その時作者はどういう境遇で何を思い描きながら詠んだのだろう……。
私の想像は激しく駆立てられた。
この句を掲載するにあたり情報を掻き集めた。今回初めて知ったが作者の水原秋桜子は俳人の他に医師というもう一つの顔を持っていた。昭和20年の春、家業を継いだ病院を空襲で焼かれ八王子に疎開する。そこの仮住まいでの情景を詠んだらしい。
寒く寂しげな情景の中においても凛と輝く花の姿に作者はその時の自分の境遇を重ね、苦境の中でも生きる気力や勇気をもらったのかもしれない。