私は〝 人 〟を写すことに拘って写真を写していた時期があった。
とにかく執拗に拘り、しかも異様なほどしつこく、撮って撮って大量に撮りまくっていた。
自分が写真家になるために。
自分自身を写真家と名乗るために。
これができなければ自分は写真家とは言えないと、
自分自身に科していた。
自分自身を試していた。
人にレンズを向けるのは厄介だ。世の中で一番難しい被写体かもしれない。
山や川を撮りに行くのも大変だが、
彼らは何時いかなる時もじっとそこに存在してくれるし文句も言わない。
でも人間はそういう訳には行かない。容易に自分の思い通りになってはくれない。
感情や意思を持っている。
そして気まぐれに動く。
今も自分を試してみる事はあるが以前より背景とのバランスを考えたり、
風景の中に動きを感じさせるためや絵のアクセントに人物を入れたりする事が多い。
これが出来るようになったのも
あの〝 修行 〟のような時期があったからかもしれないと今になって思う。
人を写す事は…。
単なる根性論ではない。技術論だけでもない。
何と言えばいいか…様々な事を教えてくれる気がする。
これからも私は拘って学び続けるつもりだ。
敬愛する写真家 荒木経惟が確かNHKかなんかのドキュメントにおいて、
会話の端っこで、聞こえづらい感じでボソッとこんなことを言っていたのを
今でも記憶している。
〝 ………人間やってこなかった奴はダメだナ。 〟
(人を写した経験のない写真家はダメな写真家という意味)