The Art from Hokkaido by SHIRAKAWA Hiromichi

Japanese artist's gallery and diary

祝 TOYOTA ル・マン優勝、連覇達成おめでとう!

 子供の頃から不思議に思っていた。日本人や日本のメーカーがあれだけ頑張っているのに新聞やTVはどうしてまともにモータースポーツについて取り上げないのか…。自動車産業はこの国の経済にとって重要な役割を担っているにもかかわらず、あまり日本ではモータースポーツというものが文化としてみてもらえていないように見える。
 先日15・16日にかけてフランスで開催されたル・マン24時間レースで TOYOTAのマシンが1・2フィニッシュ、昨年に続き優勝を成し遂げた。日本人ドライバーや日本のメーカーが連覇するのは史上初の快挙である。もともと資金力があるし、今年もアウディやポルシェなど強力なライバルメーカーのワークスチームは参戦していないから楽勝じゃないか。なんて言うのは大間違いだ。レースというものはいくら才能のあるドライバーが運転していても、マシンが完璧に仕上がっていても勝てる保証はない。下位のチームの衝突に巻き込まれたり、ピットワークでミスするかもしれない。最後の最後まで何が起きるか分からない。技術や経験と共に運が勝利を左右する。事実2016年TOYOTAは同じル・マン24時間レースで残りあと数分というところでマシンがスローダウン。あと一歩というところで優勝を逃し完走すらできなかったという苦い経験がある。それだけに今回苦労が報われたのはすごくよかった。こういう伝統のル・マン24時間レースでTOYOTAがその名を刻み世界の自動車文化の担い手の一員になって行くことが日本のレース界にとって、そしてゆくゆくは日本の自動車産業やものづくりにとっていかに大事なことか。今年はル・マンだけではない。F1でもHONDAがようやく上位入賞し結果を出し始めてきたし、アメリカのインディ500マイルではHONDAの佐藤琢磨が3位に入り去年の雪辱を晴らすいい走りをした。日産やスバルも含めて国内外のレースで日本のメーカーがしのぎを削っている。
 だからといって日本の自動車産業の未来がとても明るいわけではない。電気自動車、自動運転など自動車の技術は大きな転換期を迎えている。そこに輪をかけて人口減少やそれに伴うクルマというものに対する人々の興味の減退、米中の経済戦争など社会的環境の変化が待ち構えている。ルノーが日産を取り込むための必死な姿はご承知の通りである。それに日本が世界中でいくら車を頑張って売ったとしてもGAFAのように儲かる商売ではない。技術開発に莫大な金を投資しないといけないし、レースに参戦するにも多くの金が要る。これからは中国や東南アジアのメーカーの台頭などライバルとの手強い競争に見舞われるかもしれない。彼らは安くて燃費のいいクルマを作り、質も確実に上がって行くだろう。でも悲観しすぎることもないと思う。彼らには決して日本に追いつけないものがあるからだ。それは、文化と歴史である。自社でエンジンを開発・参戦して大きな結果を残す…だけではない。例えば伝統のあるレースで残りあと数分というところでマシンがスローダウンしてしまう。あと一歩というところで優勝を逃した…。まさしくこれが文化なのだと思う。悲劇はのちに伝説となり、歴史の1ページに書き加えられていく。それは時を超え、ゆくゆくは日本車の魅力につながっていく。この歴史の積み重ねは目に見えない価値であり金では決して買えない。一朝一夕にできるものではない。まだ彼らの作るクルマには文化がない。それゆえに日本の自動車メーカーが世界の市場で生き残っていくためには、商売だけではなく文化をつくり上げるための努力をさらに続けていくことが大事だ。
 私はこれからも日本の活躍と健闘を陰ながら応援していきたいと思っている。