The Art from Hokkaido by SHIRAKAWA Hiromichi

Japanese artist's gallery and diary

デモとTシャツ。

 ユニクロが著名なイラストレーターとコラボしたTシャツがあって、それを数十人の人達が開店と同時に店舗に一気に走り込み商品を掴みあっての奪い合い。店員の言うことも聞かず棚に上ってマネキンに着せていたものまで剥ぎ取る、そしてある者は取っ組みあいをする凄まじさ。中国の店舗で先行発売され混乱が起きているというニュースなのだが、ただお世辞にもカッコ良いとは言えないイラストでどうしてそこまで人気なのかと思っていたらそのほとんどは転売されてしまうらしい。そのイラストレーターの作品を愛しているわけじゃない。結局カネ、金儲けなのだ。ちょうどこの時期、6月4日は天安門事件が起きてからちょうど30年を迎える。当局が情報を統制をし事実を隠し武力で鎮圧したことを正当化することに国際社会は批判をするのだが、あのTシャツの争奪戦を見ていると、もしあの当時中国が100%民主化されていたら中国人は自由というものを履き違えて国内は大混乱するのではないか、皮肉にも当局は正しい事をしたのかなと思った自分がいた。
 偶然なのか30年前と同じような光景が香港で起こった。逃亡犯条例改正に反対する市民が大規模なデモを始めたのだ。一国二制度があるにもかかわらずこれで香港が中国に完全に取りこめられてしまうきっかけになるかもしれない。という危機感なのか。でも何だか今更感がある、中国なんて元々そんなもんじゃないか。ある番組で香港の人達は自分達を香港人だといってアイデンティティを誇示していたが日本人の私から見ればなんの説得力もない。どう見たってその顔つき、言語、文化・芸術のルーツを辿っていけば中国というものに行き着くだろ。あんたらの血にはやっぱり中国人の血が流れている。経済的に魅力のなくなった今の香港に一体何があるというのか。経済なんてその程度のものだ。国家のアイデンティティなんかにはなり得ない。単純に考えてみても歴史的に香港は中国というものに返還されたんだし。経済力をつけた中国にとってみれば香港と中国は別と考えること自体もう無理がある。いつか一つにしてしまうのは想像に難くない。話せばばわかってくれる?…デモすれば変えられる?… 奴らはそんなお人好しではない。まるでTシャツを奪うように欲しい物を手にするためなら何でもするし、100年でも200年でも待つ連中だ。南沙諸島では勝手に軍事基地を建て、つい先日もフィリピンの漁船が中国の船にぶつけられ沈められた(救助も謝罪もしていない)。日中関係は改善しているとか言われてる中でも尖閣には中国の艦船が毎日のようにやってくる。着々と中国は覇権主義の夢を推し進め、成し遂げるための努力を惜しまない。あんな雨傘さしてデモして騒いだところで何も変わるわけがない。武器を取り、共産党本部を破壊し、共産主義を解体しなければ真の自由を勝ち取ることなんかできない。かつてフランスがやった様に…。香港人に血を流すだけの根性と覚悟があるだろうか。私はそこまでできないと思う。彼らにとって大事なことは明日の仕事と株価だから。
 所謂芸術なんて社会の中の隅っこのことじゃないかと思われているかもしれないが、まさにその民族や国家の存在意義が問われる時、経済的な豊かさや産業・科学技術などは鼻糞みたいなもので、それよりも一番重要なものはその民族や国家に揺るぎない独自の文化・芸術が確立され存在するかどうかが最後の砦となる。逆の言い方をすれば、もし今後日本のGDPが世界ランク10位以下になっても日本の学者がノーベル賞取れなくなってしまったとしても、揺るぎない独自の文化・芸術が存在していればきっと日本は国際社会の中でなんとか生き延びていると私は信じている。